蔵人体験最終日の朝を迎えた。
7:00 今朝の朝食は洋食スタイル。
橘倉酒造の甘酒を使用した甘酒パンに、にんじん甘酒ドレッシング。酒蔵ならではの朝食だ。
8:00 今日はラジオ体操第2。小学生ぶりに行う第2体操。井出平社長の姿を真似ながら身体を温めていく。
今日の作業は、昨日の復習も兼ね、洗米した米を蒸すところから。
蒸気が平等に回るように、米をならしボイラーの電源を入れる。
蒸しあがる米を待つ間に、昨日「もと摺(ず)り」を行った酒母タンクへ。
井上杜氏の指示のもと、今日は「荒摺り」という作業を行う。昨日とは違い、塊を崩す程度に櫂棒を入れていく。
温度を計ると19度。井上杜氏は「アンカーを入れて少し温めます」と言った。
酒母の育成には繊細な温度管理が必要となるが、酒母の成長を見るのがまた楽しみだと仰っていた。さすが杜氏。
そろそろ、蒸し米が完成する。今日は酒造りで最も大切な作業、製麹(せいぎく)だ。
まずは放冷のために蒸した米を平板の上へ。米をまとめては崩し、まとめては崩すという作業を繰り返し、
温度を35度程度まで下げていく。蒸したての米はやはり少し甘い香りだ。
十分に温度が下がった米を井上杜氏に渡し、麹室へと移した。
麹室の温度は年中通して30度以上、ある程度の湿度もある。まさにサウナだ。
半袖に着替え、手と腕を洗い、消毒をする。
余計なものに触れないように麹室の中へ。
初めて入ったが、ムシっとする感じは作業をする前からつらいものがある。
井上杜氏から作業内容が伝えられる。
まずは、米を広げる、その後、種麹を振りまく。5分間動かずに待って、米を混ぜる。
これを1セットとして合計3セット行うこと。
まず、米を広げる作業。
塊をほぐしながら、テーブル全体に米を広げる。
種麹を振りまいてから、5分動かないのは、種麹がしっかり米に落ちるために必要だそうだ。
米を混ぜる作業。中央に山を作るようにまとめ、手前に戻し、種麹が全体に馴染むように混ぜていく。
一通りの作業を終えて、麹室から出るころにはシャツは汗まみれだ。
今回の蔵内での体験はここまでだ。
この後、蔵人ステイに戻り、修了試験を行った。
スライドショーに映し出される酒造りや佐久市のこと、橘倉酒造、井出平社長に関することの問いに答えていく。
なんやかんやと愉しい時間を過ごす。そして、井出平社長から修了証書を受け取り、全員で記念撮影をした。
2泊3日目の蔵人経験、終わってみればあっという間の3日間だった。
出発の案内から実際の滞在まで親切にサポートして頂き、そして気にかけて頂いた蔵人ステイのスタッフの方々。
酒造りの場を提供してくださった橘倉酒造の井出平社長。
作業の手引きを丁寧にご指導いただいた井上嘉正杜氏。
そして2泊3日の経験を共に楽しく盛り上げてくれた参加者の皆さん。
「またご縁があれば」と温かい言葉を頂き、今回の蔵人体験を終えた。
本で学んだ知識を体験することで、日本酒に関する理解をより深めることができた3日間だと思う。
この経験は、ぼくの人生の中でかけがえのないものになるだろう。
微力ながら、これからの日本酒の発展と日本酒のよさ、おもしろさを広めていける伝承者になれることを願って、
そしてまた蔵人ステイに「ただいま」と言えることを願って、信州佐久を去った。