update : 2021.07.10
株式会社 小坂酒造場は”うだつの上がる町並み”で有名な岐阜県美濃市にあります。
その建物は古く、安永元年(1772年)と記されたものも現存しており、むくりの大屋根に卯建をあげた町屋住宅とともに、うだつの町並みの中でもひときわ美しく格式高い佇まいを見せています。
創業は江戸時代にさかのぼり、250年近くこの地でお酒を醸しています。
『さんやほう』は「さんやほうサポーター」によって育てられたお米「みのにしき」を使ってつくられるお酒です。「みのにしき」は「さんやほう」の原料米。農薬を使わず、人の手によって丁寧に育てられています。
神谷:社長さん、小坂酒造のお酒の一つである「さんやほう」について教えてください。「さんやほう」は消費者参加型のお酒ですね。とてもおもしろい企画だと思うのですが、こちらはいつぐらいから始められたのですか。
ーもうずいぶん経ちます。初めてから、20年以上続いています。
神谷:そうなんですか。ずいぶん前からされているんですね。
ーええ。その頃、関(市)の小瀬の尾関二郎さんという方が、「みのにしき」というお米を開発されたんです。
「みのにしき」は「ハツシモ」を改良したお米で、大粒で味もよく、関市を中心に栽培されている地域特産米です。関市役所から、このお米を使ってお酒が造れないかと話があって、おもしろいと思って、造ってみました。
神谷:そうなんですか。「さんやほうサポーター」は何をするんですか。
ー「さんやほうサポーター」はもともとは農業に親しむという目的でつくられた会です。(関市21世紀まちづくり塾)関市役所の農務課の山下さん(当時)が中心になってされて。今も山下さんが中心になって運営されているんですが、田植えから草取り、稲刈りを経て、酒造りの最初の工程の「洗米」までを体験します。
神谷:どのような方が参加されるんですか。
ー地元の小中学生から、家族連れ、お酒の愛好家の方など、いろいろです。毎年参加されるリピーターの方も大勢います。田んぼの生き物観察は人気があって。無農薬の田んぼでしか見られない生き物が見られます。
神谷:どんな生き物がいるのか、見てみたいです。無農薬で育てられたお米でお酒を造るというのは、食の安全面からしてもいいことですね。
ーそうですね。でも実際のところ、無農薬で育てるお米はそうでないお米に比べると収穫量が少ないんです。
神谷:そうなんですか。そうするとコストの点から見れば、割高になるということですよね?
ーまあ、そう言えますね。
神谷:それでもこの活動(割高ではある無農薬の「みのにしき」によるお酒造り)を続けられるんですか?
ーええ、続けたいと思います。毎年楽しみにやってくるお子さんたちや皆さんの楽しそうな様子や笑顔を見ていると、続けよう!と思うんです。
今年も「さんやほうサポーター」を募集しています。
サポーター特典として、出来上がったお酒の原酒が買えるそうです。
自ら生育に関わったお米でお酒が醸されるなんて、なんてステキなことでしょう。
あなたも参加してみませんか。詳しくは「小坂酒造場」のホームページをご覧ください。
https://www.kuramoto-kosaka.com/
「さんやほう」の歌とともに、活動が紹介されています。とってもステキなビデオ、ぜひ見てください!!
神谷:今、お酒は何人で造っていらっしゃるんですか。
ー二人半です。半は私です、ハハハ(笑)
神谷:いやいや、それはないです。社長さん自ら酒造りに携わっていらっしゃるんですね。若い杜氏さんも頑張っていらっしゃると聞いたんですが…。
ー波多野のことですね。彼は20歳の時にうちに入社しまして。もう17年目です。以来ずっと杜氏のもとでお酒を造ってきました。今では彼がリーダーとなって、うちのお酒を造っています。研究熱心で杜氏の研修会にも毎年参加しています。
神谷:そうなんですね。うちの店でも若者層の「百春」ファンが増えています。『中汲み 純米しぼりたて槽口直詰』は特に人気があって、リピート買いされる方が多いです。
『直汲シリーズ』に力を入れていらっしゃいますね。どうしてこのシリーズをつくろうを思われたんですか。
ー実を言うと、私はあまりお酒が強くないんです。でも、やっぱり「生」はおいしいと思う。だから、自分がおいしいと思うものをつくりたいと思って、造っています。
神谷:なるほど。だから、お米や酵母を変えた組み合わせで、個性豊かなお酒を造られているのですね。
ところで、直汲シリーズの一つ『DOLCE』は低アルコールで甘めのお酒ですね。
ーラインナップの一つとして造ってみました。『DOLCE』の名付け親はうちの娘なんですよ。
白麹を使ったお酒もありますよ。
神谷:そうなんですか。思わず手を伸ばしてみたくなるようなお洒落なネーミングですね。
白麹を使ったお酒もぜひ飲んでみたいと思います。社長さんは常に新しいことに挑戦されているんですね。
これからのお酒が楽しみです!
黒ラベルの「無ろ過生原酒直汲」は特約店(現在全国37店、県下8店)のみの
販売商品です。個性豊かな6種類(令和3年5月現在)をどうぞお楽しみください。
「百春」のラベルの字体は大きく二つ。クラシックラベルと筆ラベル。今回は筆ラベルについて社長さんにお尋ねしました。
神谷:お店の暖簾にも染められているこの「百春」という字はとても素敵ですね。「直汲シリーズ」もこちらで統一されていますが、どなたが書かれたんですか。
ーこれは「川端龍子(りゅうし)」という画伯の作です。
神谷:「かわばたりゅうし?」
社長さん:「川端龍子」は「川合玉堂」や「横山大観」と並んで有名な日本画家で、もともとの揮毫は絵だったんです。ほら、あそこにあるでしょ。絵の上に(字が)書かれたものなんです。
(下の写真をご覧ください)
祖母が川端龍子画伯にご縁があって、うちのお酒を贈ったら「美味しい」と随分気に入ってくださって、あれを書いてくださったんです。あまりにもいい字だったものですから、許可を頂いて、ラベルに使わせてもらっています。
神谷:お酒の品格に合ったステキな書体ですね。
神谷:これからどんなお酒を目指していきたいですか。
「テロワール」という言葉をご存じですか。
「土地」というフランス語から派生した言葉で、生育地のの地理、地勢、気候による特徴を指す言葉です。
長良川の伏流水である有機ミネラルに富むおいしい地水と、たくさんの地米を使い、この地にあるもの本来の自然の性質を、お酒に代えてお届けしたいと思っています。
美濃ならではのお酒、小坂酒造場ならではのお酒の探求に余念のない日々を送られている社長さん。秘めたる情熱がひしひしと感じられました。
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