• #今日の一皿
  • 2023.03.01

こんにちは。息子の高旭です。
『さんやほう』の活動でご縁を頂いた「百春」の醸造元『小坂酒造場』の小坂社長より、「酒造りの勉強を兼ねて、蔵の手伝いをしないか」とのお誘いを受け、昨年10月より蔵の手伝いをさせていただいております。

2月28日でかけどめ(酒造りの仕込みが終わる節目の日)となりました。
自身の忘備録として、蔵の一日を大まかに綴りたいと思います。

1日の流れは、だいたい次の通りです。
出麹→放冷機・種切り→分析・仕込み→洗米→浸漬

日によって作業内容は変わりますが、基本はこのような動きになります。

朝8時、出麹のため室に集まります。
出麹とは文字通り、完成した麹を室から出す作業です。


次に蒸しあげた米を冷やす作業と種切りと呼ばれる作業に移ります。

蒸しあがった米は、そのままはタンクに入りません。米の温度を一定まで下げる必要があるからです。

このため、放冷機を使用したり、布の上に米を広げたりする手法が用いられます。

麹米の場合は、米に種麹を振りかける作業が加わります。この作業は、麹室で行う場合もあります。
種麹を振りかける作業を「種切り」と呼んでいます。

写真は大吟醸用の山田錦。米を広げ、目標の温度まで下がるのを待つ。

温度が下がった米は、エアシューターなどを用いてタンクへ運びます。


仕込みは、杜氏が醪の様子を見ながら手を加えていきます。

櫂棒はただ力任せに混ぜればいい、そういうものではありません。

醪の様子を見ながら適度に、時には力強く、時には撫でる程度に、と教えていただきました。

醪の温度を一定にするため、櫂棒で流動をつくる。

仕込みが終わると、杜氏は日本酒の成分分析のため分析室に入り、
私はこれまでの工程で出た洗い物を熱湯で洗い、次の洗米までに床を清掃し、合流します。

なぜ、米を蒸すのか? 米は炊くものではないのか。
それは余計な雑味を出さないようにするためだそうです。
炊いてしまうとお米がふっくら、もちもちに仕上がる、これが酒造りには向かない。
食べるには欠かせない要素だが、酒造りにはむしろ邪魔になってしまうのだそうです。

洗米作業は、手で行う場合と機械を使う場合があります。

その後の浸漬は、秒数単位での管理が必要になります。
これは浸漬時間が短いと十分に蒸せず、長いと溶けすぎてしまうため。
酒米の品種によって、秒単位で適量の水を吸わせます。
浸漬した米はその後蒸し器に入れ、米張りを行い、翌日の蒸し作業に備えます。
午前中の作業はだいたいこの辺りまでです。

浸漬を終えた米、品種・産地・水温さまざまな要因で浸漬時間は大きく変わる。

新酒がしぼれる時期になると、この後はヤブタから酒粕を剥がし、計量し、適切な大きさに切り、袋詰めする作業があります。

波多野杜氏。小坂酒造で20年以上酒造りを行っている。それぞれの酵母の特徴を生かす酒造りが得意だ。

これ以外にも、備品の修繕や麹室での作業、品質などを管理する帳簿仕事など、蔵仕事にはさまざまな仕事があります。
杜氏は、時には朝4時、5時から出勤し、皆が来る前に作業を行うこともありますし、温度管理が必要な際には、醪の発酵具合を見るために夜通しで仕事をすることもあるようです。

今年のお手伝いはヤブタ(酒を搾る機械)を片付けるまでの予定。
少しでも波多野杜氏から学べることは学び、しっかり自分の務めを果たしたいと思います。
行程をそばで見ていると、酒造りの大変さとおもしろさを垣間見ることができます。

今回お誘いいただいた小坂社長と波多野杜氏のご指導に心から感謝しています。(高旭)


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